ワインのコンシェルジュ

ライブラリー

ワインのトリヴィアル・パスートVol.12【 Sublimotion -世界一高いレストラン- 】

【 Sublimotion -世界一高いレストラン- 】

ヨーロッパのハワイと言われるスペインのマヨルカ島の南西にイビサ島という島があります。
日本ではハードロックカフェで有名なハードロックカフェグループが、2014年5月にイビサ島にハードロックホテルと言うリゾートホテルをオープンしました。
その中に、世界一高いレストランと言われるSublimotionがあります。
シェフは、マドリッドのテラッサ・デル・カジノと言うレストランで2010年にミシュラン2つ星を獲得したパコ・ロンセロ氏。
20皿からなるメニューは、真っ白な長方形の部屋の真っ白な長方形のテーブルで12人のゲストに同時に供給され、四方の壁とテーブルに料理に合わせた今はやりのプロジェクトマッピングの映像が流れる仕組みです。
ホームページにビデオが多く載っていますので、詳しくはそちらをご覧ください。
http://www.sublimotionibiza.com/#!home
料理はエル・ブリの流れをくむ分子料理、そしてサービス(演出)は食事を五感で味わうというファット・ダックの進化形と言えます。
コースのお値段は、1500ユーロ。
果して席は埋まるのかと一瞬思いましたが、ヨーロッパ有数の避暑地であり、かつ有名クラブが数多く集まり、それぞれのクラブが泡パーティーや水パーティーと言った趣向を凝らしたド派手なイベントを開催するようなパーティーアイランドなので心配はいらないのでしょう。
確かに、このレストランを開業するとしたら、イビサ島かラスベカスか、と言う感じでしょうか。
しばらくホームページを眺めていましたら、段々と何か頭の中にもやもやとしたものが芽生えてきました。
例えば、パリのムーラン・ルージュは、スペクタクルなショーを見ながらフレンチが食べられます。
一方、1962年から1983年までミシュランの3つ星を維持し、シャガールやダリなどを顧客に持ち、フランスのレストラン界を牽引したパリのラセール(私がワインに嵌るきっかけとなったのもこのレストランでした)は、食事中に生演奏が流れ、室内に熱気がこもってくると天井がオープンし、冷たい外気が流入する事により一瞬の静寂が生まれ、そして視線を上にあげると満天の夜空が眺められる、という趣向を凝らしていました。(ミシュラン15年版でとうとう1つ星に降格してしまいましたが、同様の演出を現在も体験することができるはずです。)
考えてみれば、要は演出にウェートを置くか料理にウェートを置くかの違いで、Sublimotionは新しいことをやっているのではなくウェートを均等に置いているだけではと思えてきたのです。
つまり、ウェートを均等に置くということは、ディズニーランドのレストランでキャラクターが登場しキャラクターに由来したプレートを食べるのと同じ、すでに使い古された手法のように思えてきたのでした。
世界各国のスターシェフやレストランが次々と料理やその提供の仕方の創出にチャレンジしていますが、料理はやはり料理に集中すべきでは、と改めて思った次第です。