【 イタリアワイン 】
イタリアが統一国家になったのは1861年で、日本では江戸時代の最末期にあたります。
ローマ時代のイメージがあるので、イタリアは古くからある国のように思いますが、実は新しい国だったのです。
それまでは都市国家だったため、ワイン造りもそれぞれの地方ごとにブドウ品種や栽培方法等が異なり、イタリアワインは多様性が最大の特徴となります。
現在は20州に分かれていて、すべての州でワイン造りが行われています。
北部イタリア
1. ヴァッレ・ダオスタ州 スイスとフランスと国境を接していて、イタリアで一番小さい州でワインの生産量も最も少なくDOCが1種あるだけですが、多彩なワインを造っています。白ブドウのプリエ・ブラン、黒ブドウのフミン、プティ・ルージュが土着品種です。
2. ピエモンテ州 フィアットの企業城下町として発展したトリノが州都です。ネッビオーロから造るバローロ、バルバレスコ、白ブドウのコルテーゼから造るガーヴィ、同じく白ブドウのアルネイスから造るロエーロ・アルネイス、モスカート・ビアンコから造るスパークリングのアスティを有する高品質ワインの産地です。バルベーラ、ドルチェットから造る赤ワインも秀逸です。また、フローラルフレーバーが特徴のルケの産地でもあります。
3. リグーリア州 地中海に面しイタリア最大の港ジェノヴァが州都です。ヴァッレ・ダオスタ州に次いでワインの生産量は少なくDOCGはありません。土着品種のボスコ、アルバローラ、それとヴェルメンティーノから造られるチンクエ・テッレと言う白ワインが代表格です。因みに、チンクエ・テッレとは5つの漁村の総称で世界遺産にも登録されています。
4. ロンバルディア州 ミラノが州都で避暑地として有名なコモ湖もありイタリアの国民総生産の4分の1を生み出す最も豊かな州です。スプマンテの最高峰、瓶内2次発酵で造られるフランチャコルタの産地です。
5. トレンティーノ・アルト・アディジェ州 北部ドイツ語圏アルト・アディジェ地方と、南部イタリア語圏のトレンティーノ地方に分かれ、DOCGはありません。アルト・アディジェ地方はイタリアを代表する白ワインの産地ですが、スキアーヴァ、ラグレインといった土着品種の黒ブドウも多く栽培され、ラグレインから造られる赤ワインに素晴らしい物があります。トレンティーノ地方では、フランチャコルタと同様の瓶内2次発酵で造られるシャルドネ主体のトレントというスパークリングワインが赤丸急上昇です。果実味のフランチャコルタ、ミネラルのトレントと言われています。
6. ヴェネト州 水の都ヴェネツィアが州都でワイン生産量もしばしば全州で1位になります。黒ブドウのコルヴィーナ、ロンディネッラ、モリナーラから造られるヴァルポリチェッラ、白ブドウのガルガネーガから造られるソアーヴェ、グレラから造られるスパークリングのプロセッコが有名です。
7. フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州 北はオーストリア、東はスロヴェニアと国境を接しています。高品質な白ワインの産地として名高く、土着品種としては白ブドウのフリウラーノやリボッラ・ジャッラそして甘口ワインを造るピコリット、黒ブドウのレフォスコ、スキオッペティーノ、ピニョーロなどが有名です。
8. エミリア・ロマーニャ州 食品産業と自動車産業が栄えていて、州都ボローニャのパスタソース、ボロネーゼは日本ではミートソースとしてなじみ深く、パルミジャーノ・レッジャーノやバルサミコの産地でもあります。フェラーリ、ランボルギーニ、マセラッティもこの地に本社を構えます。ワインは何といっても発泡性赤ワインのランブルスコが有名です。
中部イタリア
9. トスカーナ州 フィレンツェが州都で、日本の誰もが知っているピサの斜塔もトスカーナ州のピサにあります。全生産量の85パーセントが赤ワインで、サンジョヴェーゼから造られる最も有名なイタリアワインのキャンティ(クラシコ)やブルネッロ・ディ・モンタルチーノの産地です。トスカーナ州で唯一の白ワインDOCGがヴェルナチャ・ディ・サン・ジミニャーノです。また70年代からは伝統や格式にとらわれず美味しさだけを追求して造られたスーパートスカーナと呼ばれる様々な著名ワインが輩出されました。
10. ウンブリア州 ウンブリア州は緑の丘陵地帯が州土の70パーセントを占め、「イタリアの緑の心臓」と呼ばれています。唯一、海にも国境にも接していない内陸の州で、州都はペルージャです。ポリフェノールの含有量が大変多く長期熟成に向くサグランティーノから造るサグランティーノ・ディ・モンテファルコとグレケットやトレッビアーノの亜種とされるプロカニコから造られる軽い飲み口の白ワイン、オルヴィエートが有名です。
11. マルケ州 ヴェルディッキオを使用した、海洋性気候の地域で造られるヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージと内陸性気候の地域で造られるヴェルデッキオ・ディ・マテリカという白ワインが代表的ワインです。また、黒ブドウのラクリマ・ディ・モッロ・ダルバから造られるワインは薔薇のポプリのような花の香りがします。
12. ラツィオ州 首都ローマを州都に持つラツィオ州では、マルヴァジアやトレッビアーノの亜種から造られる、歴史的なエピソードを持つエスト!エスト!!エスト!!!ディ・モンテフィアスコーネやドイツの詩人ゲーテが著書の「イタリア紀行」の中で称賛したフラスカーティという軽口白ワインが有名です。
13. アブルッツオ州 白ブドウのトレッビアーノから造るトレッビアーノ・ダブルッツオと黒ブドウのモンテプルチアーノから造るモンテプルチアーノ・ダブルッツオというコストパフォーマンスの良いワインを生産しています。
14. モリーゼ州 人口も少なくイタリアで最も知名度の低い州と言われ、ワインは地元消費用が中心です。モリーゼのみで栽培されている黒ブドウのティンティリアを使ったワインが個性的です。
南部イタリア
15. カンパーニャ州 ナポリが州都で青の洞窟で有名なカプリ島があります。イタリア南部の重要品種であるアリアニコから造るタウラージ、アリアニコ・デル・ダブルノ、白ブドウのフィアーノから造るフィアーノ・ディ・アヴェッリーノ、同じく白ブドウのグレーコから造るグレーコ・ディ・トゥーフォがDOCGです。日本語に訳すと「キリスト教の涙」となるラクリマ・クリスティと言う白赤ワインもそのネーミングからか現地では人気があるようです。
16. プーリア州 以前はヨーロッパ最大のバルクワインの生産地でしたが、最近は品質の向上に務めており、アメリカのジンファンデルと同じ品種のプリミティーボや、イタリアをブーツに例えるとそのヒールにあたるサレント半島でそのほとんどが栽培されているネグロアマーロから造られるワインが有名です。
17. バジリカータ州 プーリア州がブーツの踵なら、バジリカータ州はちょうど土踏まずの所にあたります。ワインの生産量は多くなく、アリアニコから造るアリアニコ・デル・ヴルトゥレ・スペリオーレが2010年にDOCGに昇格しました。
18. カラブリア州 カラブリア州はブーツで言えば、つま先の部分にあたります。カラブリアのワインと言えばチロ。赤、ロゼはカラブリア州で最も多く栽培されているガリオッポから、白はグレーコ・ビアンコから造られますが、知名度が高いのは赤です。
19. シチリア州 イタリア最大の州であり地中海最大の島で、州都はパレルモです。今世紀に入ってからは雨後の筍のように高品質ワインが誕生しています。代表的品種は、黒ブドウはネロ・ダーヴォラ、ネレッロ・マスカレーゼ、フラッパート、白ブドウはカタラット、インツォリオ(アンソニカ)、グレカニコ、ジビッポ(モスカート)、カッリカンテ等です。ネロ・ダーヴォラとフラッパートをブレンドして造るチェラスオーロ・ディ・ヴィットリアがシチリア唯一のDOCGです。
20. サルデーニャ州 地中海ではシチリア島に次いで大きい島ですが、ワインの生産量はシチリア州の8分の1に過ぎません。白ワインが多そうなイメージですが、生産量は赤ワインが半分以上の割合を占めます。白ブドウのヴェルメンティーノを使用したヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラが唯一のDOCGで、赤ワインでは黒ブドウのカンノナウ(グルナッシュ)を使ったカンノナウ・ディ・サルデーニャが有名です。