【 ブドウの品種 No.2 】
今回は、フランスのボルドー以外の赤ワインに使用される主なブドウ品種を紹介します。
ピノ・ノワール (イタリアではピノ・ネロ ドイツではシュペートブルグンダー)
「赤ワイン用のブドウの王様は」といわれたら、カベルネ・ソーヴィニヨンと返答しますが、「最も高貴なブドウは」といわれたらピノ・ノワールと答えるでしょう。
通常、カベルネ・ソーヴィニヨンが他のブドウとブレンドされるのに対し、ピノ・ノワールは単独でワインが造られるのもその気高さの要因だと思います。
ピノ・ノワールは以前、フランスのブルゴーニュ以外では栽培が難しい品種と言われていましたが、現在はアメリカやニュージーランドのピノ・ノワールも市民権を得てきました。
現在、ピノ・ノワールの作付面積はフランスが1番でアメリカが2番です。
アメリカのピノ・ノワールの代表的な産地は、カリフォルニアのノースコーストにあるソノマ・カウンティと、セントラルコーストにあるサンタ・バーバラ・カウンティ、そして近年赤丸急上昇のオレゴン州です。
オレゴン州はカリフォルニア州の北に位置し緯度がブルゴーニュ地方とほぼ同じなため、ワインの味わいは繊細なブルゴーニュとジャミーなカリフォルニアの中間くらいと言われています。
ニュージーランドのピノ・ノワールの代表的産地は、北島にあるウエリントンの北東に位置するワイラパパ地方のマーティンボロー地区と、南島のセントラル・オタゴ地方です。
日本におけるピノ・ノワールの生産は、まだ微々たるものですが北海道の余市とか長野県で急速に増加しています。
ガメイ
ガメイは、ピノ・ノワールとグエ・ブランが自然交配してできたブドウと言われています。
シャルドネ、アリゴテ、ミュスカデも同じブドウの交配で生まれているので、これらは兄弟品種と言うことになります。
ガメイは病虫害に強く生産性が高いため、14世紀まではブルゴーニュの銘醸地であるコート・ドール全体に植えられていました。
しかし、コート・ドールの石灰質土壌に適さず品質の劣ったワインが造られていた為、1395年ブルゴーニュ公国を収めていたフィリップ・ル・アルディによりガメイの栽培が禁止されます。
産地を追われたガメイは花崗岩質土壌のボジョレー地区を適地とし、ボジョレー地区が世界の総栽培面積の50パーセント以上を占めています。
ガメイはベーリー系の香りが特徴で、私はボジョレーを飲むと小さい頃食べたロッテのブルーベリーガムをいつも思い出します。
シラー(オーストラリアではシラーズ)
シラーは、成分に色素や糖分が多く含まれているので、色の濃いアルコール度数の高いワインとなり、最も長熟が可能な品種のひとつです。
コート・デュ・ローヌ地方が原産と言われ、ローヌ北部でエルミタージュやコート・ロティといった銘醸ワインを生み出しています。
特にエルミタージュは古くから有名で、1800年代にはボルドーワインの色を濃くしたりアルコール度数を上げたりするためにブレンドされていました。
マルゴー村の人気ワインのシャトー・パルメは、2004年にシラーを30パーセントブレンドしたワインを復活させ、シャトー・パルメ・19センチュリー・ヒストリカル・ブレンドと言う名前でリリースしました。
AOCの規定でシラーの使用は認められていない為、ヴィンテージは表記できません。
エチケットのベースの色が昔に倣って濃紺なのがオシャレな感じです。(現在のは黒。)
コート・デュ・ローヌのシラーは、花や胡椒の香りがし、スパイシーな味わいになるのが特徴です。
もう一つの有名な産地がオーストラリアです。
オーストラリアではブルーベリーやカシスのジャムのような甘みを感じる渋みの少ないワインとなります。
これは、オーストラリアの気候がより温暖なためワインが濃くなりがちなので、発酵の途中で種子や皮を引き上げるという製法を採用することや、使用する樽の材質が違うことなどに依ります。 (一般的にフランスではフレンチオークを使い、オーストラリアではアメリカンオークを使うので、オーストラリアの方が甘いヴァニラのような香りがより顕著に出ます。)
焼き肉に良く合うワインの代表がシラーですが、甘辛いたれの焼き肉にはオーストラリアのシラーズ、塩コショウの焼き肉にはローヌのシラーと言うのが定番です。
グルナッシュ(スペインではガルナッチャ イタリアのサルデーニャ州ではカンノナウ)
グルナッシュは、黒ブドウの中で一番の栽培面積を誇ります。(トータルでの一番は白ブドウのアイレン。)
スペインのアラゴン州が原産と言われ、スペイン北部や東部、フランスのラングドック地方やコート・デュ・ローヌ南部が主な生産地です。
果実味が豊かでタンニンが少なめなので、よりタンニンのあるシラー等とブレンドされることが多い品種です。
コート・デュ・ローヌ南部で一番有名なワインはシャトーヌフ・デュ・パプで、13種の品種の使用が認められているワインです。
シャトーヌフ・デュ・パプの2大生産者のシャトー・ド・ボーカステルが未だに全品種を使用して伝統的な味わいのワインを造っているのに対し、もう一人の雄のシャトー・ラヤスは、グルナッシュのポテンシャルを信じグルナッシュ100パーセントでワインを造っています。
スペインではガルナッチャと呼ばれ、ガルナッチャ100パーセントで造られるワインもよく見かけ、フルーティな味わいが特徴です。
イタリアのサルデーニャ州ではカンノナウと呼ばれ、代表的な赤ワイン、カンノナウ・ディ・サルディーニャでは90パーセント以上の使用が義務づけられています。
ムールヴェードル カリニャン サンソー
南フランスで、シラーやグルナッシュとよくブレンドされるブドウにムールヴェードル、カリニャン、サンソーがあります。
コート・デュ・ローヌにおける典型的なブレンドが、グルナッシュとシラーとムールヴェードルなので、ニューワールドでコート・デュ・ローヌの味わい目指しこの3種を使用して造ったワインに頭文字をとってGSMという名前を付けたものをよく見かけます。
ムールヴェードルは、スペインではモナストレル、アメリカやオーストラリアではマタロと呼ばれています。
タナ
フランス南西地方のスペインとの国境近くが主産地でマディランの主ブドウです。
タンニンが強く、マディランは長期熟成が可能なワインです。