【 海外で活躍する日本人造り手 】
最近、世界を股にかけて活躍する日本人アスリートが急増しています。
ボクシングの井上尚弥選手、野球の大谷翔平選手、テニスの錦織圭選手や大坂なおみ選手、ゴルフの渋野日向子選手等々、枚挙にいとまがありません。
ワインの世界でも世界中で日本人の生産者がワイン造りにチャレンジしています。
最も大々的なのはサントリーがオーナーのシャトー・ラグランジェです。
ボルドーのシャトーワインはオーナーが金欠になり投資が行われなくなると、品質が大幅に低下します。
瀕死状態だったシャトー・ラグランジェの経営に1983年からサントリーは参画しますが、当時欧米以外の企業がシャトー経営するのは初めてで、フランス国内では随分と物議を醸しました。
何年か前にサントリーがオーナーになったファーストヴィンテージの1984年から2007年までの全てのシャトー・ラグランジェを垂直で試飲する機会に恵まれました。
ボルドーワインには毎年ヴィンテージの特徴と言うのがあるのですが、通常各々のシャトーのワインはヴィンテージ以上に成功を収めることもあれば、良いワインを造ろうとしてギャンブルに失敗しヴィンテージに見合わないワインを造ることもあります。
しかし、私が試飲で感じたのはシャトー・ラグランジェは毎年きっちりとボルドーのヴィンテージの特徴に合ったワインを造り上げているな、ってことでした。
良くも悪くも日本の企業らしいな、とやたら感心したことを覚えています。
個人の生産者に目を向けると、フランスでは、仲田晃司氏が2000年にブルゴーニュにメゾン・ルー・デュモンを立ち上げました。ドメーヌ物、ネゴシアン物、そして仕事で知り合ったドメーヌに眠っていたオールドヴィンテージのワインをアジアを中心にその95パーセントを輸出しています。
また2002年には新井順子氏がロワールのトゥーレーヌにドメーヌ・ボワ・ルカを立ち上げ自身のワイン造りを始めると同時に友人の自然派ワインを日本に紹介し、日本でも自然派ワインのブームが起きました。
また、篠原麗雄氏は2002年からカスティヨン・コート・ボルドーでクロ・レオを造り始め、
大岡弘武氏は2003年にローヌ地方のサン・ペレイにラ・グランド・コリーヌを設立、そしてブルゴーニュのドメーヌ・シモン・ビーズやドメーヌ・シュヴロには日本人女性が嫁いでいます。
アメリカでは、1980年にカリフォルニア州ソノマのロシアン・リヴァー・ヴァレーにナカイ・ヴィンヤードを設立した中井章恵氏がその走りです。
日本国内のみの販売で輸入から販売まで自分たちで行っているため、あまり話題になることはありませんが。
1999年には私市友宏氏がカリフォルニアにマボロシ・ヴィンヤードを設立、2001年には夫と共にフリーマン・ヴィンヤードをアキコ・フリーマン氏が設立します。
2008年にファーストヴィンテージをリリースしたナパのケンゾー エステイトのオーナーであるカプコンCEOの辻本憲三氏のワインは日本の高級レストランのワインリストの常連です。
2010年には中村倫久氏がナカムラセラーズを設立、また漫画「神の雫」で話題になったシャトー・イガイ・タカハは杉本隆英・美代子夫妻がオーナーです。
ニュージーランドでは、2001年に楠田浩之氏がマーティンボロにクスダワインズを設立、2009年には佐藤嘉晃・恭子夫妻がセントラル・オタゴにサトウ・ワインズを、小山竜宇氏がワイパラにコヤマ・ワインズを、木村滋久氏がマールボロにキムラ・セラーズを設立、2010年には岡田岳樹氏がマールボロにフォリウム・ヴィンヤードを設立しています。
私は、上記のすべての造り手のワインを試飲またはボトルで飲んだことがあるのですが、どのワインも日本人の造り手らしく大変丁寧に造られていて、外れはありませんでした。