ワインのコンシェルジュ

ライブラリー

ワインのトリヴィアル・パスートVol.37【 Wines of the Century 】

【 Wines of the Century 】

1999年1月31日発刊のアメリカのワインスペクター誌でWines of the Centuryという特集が組まれました。
20世紀に造られた最高の12本のワインを選ぶという企画です。
その中にアメリカのワインが2本、甘口ワインが2本入っているので「なんだかなぁ」という気持ちがなくもありませんが、ご紹介します。

シャトー・マルゴー 1900年
(フランス ボルドー地方 メドック地区 マルゴー村 カベルネ・ソーヴィニヨン主体)
初っ端から「1900年って19世紀じゃん」と突っ込みたくなるところですが、まあリリースされたのは20世紀でしょうから許すとしましょう。
シャトー・マルゴーはご存じボルドーの5大シャトーのひとつです。
1900年は前年の1899年と共に2年続けて最高の当たり年といわれている伝説のヴィンテージでその後現在に至るまでで挙げるとしても、1928年と1929年、2009年と2010年くらいではないでしょうか。
当時は、現在のような栽培技術や醸造技術もなくワインの出来は天候次第だったのでなおさら奇跡のような扱われ方だったと思います。

シャトー・ディケム 1921年
(フランス ボルドー地方 メドック地区 ソーテルヌ村 セミヨン80% ソーヴィニヨン・ブラン20%)
世界一の貴腐ワイン。シャトーでは、1本のブドウの樹からグラス1杯分のワインしか造らないと誇らしげに語っているとされるワイン。
ワインの価格は、需要と供給とのバランスにあるので、世の中の嗜好が辛口ワインに移っている現在、最もお買得なワインかもしれません。
1921年は、20世紀最高のソーテルヌの当たり年といわれている年で、12本のうちの1本にこのワインが選ばれても、文句が出ることはないでしょう。

キンタ・ド・ノバル・ナショナル 1931年
(ポルトガル トウリガ・ナシオナル主体)
ポートワインです。このポートワイン自体は、大変貴重で素晴らしいものとは思いますが、12本のうちの1本となると、少しアメリカの匂いを感じてしまいます。
フランスの雑誌だったら間違えなく選ばれないでしょうが、イギリスの雑誌だったらどうかなって感じですかね。
刑事コロンボの名作「別れのワイン」でも、決め手はフェレイラ社のヴィンテージポートの1945年でした。

ドメーヌ・ロマネ・コンティ 1937年
(フランス ブルゴーニュ地方 ヴォーヌ・ロマネ村 ピノ・ノワール100%)
文句なく入れなくてはいけない1本がロマネ・コンティでしょう。
しかし、ヴィンージを選ぶとしたらいくつかの候補が挙がるかもしれません。
このころのエチケットは、現在使われているゴシック体の文字ではなく筆記体で私はこの頃のほうが好きです。
10年位前に1933年ヴィンテージを試飲したことがあるのですが、恐ろしいほどにパーフェクトなワインでした。

イングルヌック カベルネ・ソーヴィニヨン 1941年
(アメリカ ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン100%)
アメリカから1本入れなければならないとしたらこのワインなのでしょう。
歴史の浅いアメリカでの1941年ヴィンテージはフランスなら18世紀のワインに匹敵する感じでしょうか。
18世紀ボルドーの最高の当たり年は1784年と言われているので、アメリカ人にとってのこのワインは1784年のラフィットということでしょうかね。
現在のオーナーはフランシス・フォード・コッポラ氏です。

シャトー・ムートン・ロートシルト 1945年
(フランス ボルドー地方 メドック地区 ポーヤック村 カベルネ・ソーヴィニヨン主体)
第2次世界大戦の勝利を記念してヴィクトリーのVマークをデザインしたエチケットを採用した伝説のワイン。
これ以降、シャトー・ムートン・ロートシルトは毎年異なるアーティストに制作させたエチケットを採用することを復活させます。
また、20世紀の中で最高のワインを1本選べと言われたら、多分このワインが選ばれるのではと言われているワインです。
私が銀座の店に立っていたころ、ワイン評論家のロバート・パーカー氏の本の日本語版監修をされていたアーネスト・シンガー氏が何度かお客様として来店されました。
その時に、「人生で飲んだ最高のワインは」と質問したところ生まれ年というのもあるのかしれませんが、迷わずこのワインを挙げていました。

シャトー・シュヴァル・ブラン 1947年
(フランス ボルドー地方 サンテミリオン地区 カベルネ・フラン66% メルロ34%)
ラフィット・ロートシルト、ラトゥール、マルゴー、オー・ブリオン、ムートン・ロートシルトの5大シャトーのあるメドックやグラーブ地位の左岸に対し、比較的新しい右岸にあるサンテミリオン地区で、シャトー・オーゾンヌと2トップを形成するワイン。
とは言え既に19世紀には名声を博していました。
上記ワインにペトリュスを加えて8大シャトーと呼ばれています。
カベルネ・フランの使用率が3分の2を占めるため、グランヴァンの中でも唯一無二の存在で、飲み頃の幅が最も広いワインと言われています。
また、ムートン・ロートシルトの45年に唯一対抗できるワインとも言われています。

ビオンディ・サンティ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ リゼルヴァ 1955年
(イタリア トスカーナ州 サンジョベーゼ・グロッソ 100%)
ビオンディ・サンティは 1888年にブルネッロ・ディ・モンタルチーノというワインを初めて世に送り出した、まさにブルネッロの生みの親という存在です。
今でこそイタリアの高級ワインはたくさんありますが、私がワインに興味を持ち始めた頃はこのワインとガヤの単一畑から造る3種のバルバレスコくらいしかありませんでした。
1994年に初めてフィレンツェとベニスに旅行した時、フィレンツェの酒屋ではこの1985年を購入し、ベニスのベリーニ発祥のレストラン、ハリーズ・バーではリゼルヴァではありませんが1988年ヴィンテージを注文した記憶があります。

ペンフォールズ グランジ ハーミテージ 1955年
(オーストラリア シラーズ90% カベルネ・ソーヴィニヨン10%)
1952年にリリースされたオーストラリア初の高級ワインです。
以前、ペンフォールズ社のセミナーに参加した時、1991年から年に数回世界各地でグランジをはじめとするペンフォールズのオールドヴィンテージの赤ワインを所有する人たちに対して、ワインの状態を診断しリコルクをするサーヴィスを行っていると聞き驚いた記憶があります。
ただし本物であれば、というオチはつきましたが。
1989年以降はハーミテージがとれ、現在はグランジとして流通しています。

ポール・ジャブレ・エネ エルミタージュ ラ・シャペル 1961年
(フランス コート・デュ・ローヌ地方 シラー100%)
ラ・シャペルは、この伝説の1961年と1978年、1990年がワインラヴァー憧れのヴィンテージと言われています。
1990年頃が日本ではワインが一番安く流通していた時期だと思うのですが、当時でも1978年ヴィンテージは大変高価で手が出ませんでした。
1990年は一度だけ飲んだことがあるのですが、記憶に残るワインでした。
1990年以降少し低迷しますが2006年にシャトー・ラ・ラギューヌを所有するフレイ家がオーナーとなり今は完全復活を遂げています。

シャトー・ペトリュス 1961年
(フランス ボルドー地方 ポムロール地区 メルロ100%)
ポムロール地区は、サンテミリオン地区同様右岸にありボルドーの中では一番の新興勢力です。
シャトー・ペトリュスは元祖シンデレラワインで、メルロで造られるワインを1本選べと言われたら、文句なくペトリュスの名が挙がるでしょう。
このペトリュスと同じくポムロールのル・パンが、ボルドーで最も高額で取引される地位を競っています。

ハインツ カベルネ・ソーヴィニヨン・ナパ・ヴァレー・マーサズ・ヴィンヤード 1974年
(アメリカ カベルネ・ソーヴィニヨン100%)
1974年はカリフォルニアの世紀のヴィンテージというのはわかりますが、アメリカの雑誌でなければ間違えなく選ばれてないでしょう。
フランスのワインがいまだトップ走者なのに対し、カリフォルニアの2本は決してそうは言えないのが現状です。
1990年以降にスクリーミング・イーグルを筆頭に様々なカルトワインが誕生し、これら2本は目立たない存在になっています。
2099年にまた同様の特集が組まれたとしたら、アメリカのワイン雑誌がどのアメリカのワインを選ぶのか興味はありますが、生物学からするとどうにもなりません。