【 モンラッシェ 】
辛口白ワインの最高峰といったら、百人中百人がモンラッシェと言うでしょう。
モンラッシェを語る時は、「三銃士」を書いたフランスの作家アレクサンドル・デュマ・ペールが「脱帽し、神に祈るように跪いて飲むべし」と言った、という逸話が必ずついてきます。
モンラッシェと名のつく特級畑は5つあります。
モンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェ、バタール・モンラッシェ、ビアンヴニュー・バタール・モンラッシェ、クリオ・バタール・モンラッシェです。
シャンベルタンと名の付く特級畑は9つありますが、その頂点に君臨するのがシャンベルタンであるのと同様に、モンラッシェが頭一つ抜け出しています。
モンラッシェの畑は、ピュリニー・モンラッシェ村とその南に隣接するシャサーニュ・モンラッシェ村にほぼ半々の4haずつあります。
厳密にいうとピュリニー側がモンラッシェ、シャサーニュ側が冠詞付きのル・モンラッシェと呼ばれています。
ピュリニー側を代表する生産者はブシャール・ペール・エ・フィス、ジョセフ・ドルーアン、
ルイ・ラトゥール、オリヴィエ・ルフレーヴ、ラモネ、シャサーニュ側はDRC、ルフレーヴ、コント・ラフォン、ジャック・プリウール、マルク・コラン等です。
ピュリニー村は、地下水面が近いためにカーヴがなく、空調が普及するまでワインを管理することが困難でした。
そのため、ドメーヌ元詰めが一般化するのが遅れたこともあり、ピュリニー村のモンラッシェはブシャール・ペール・エ・フィスやラモネ等を除くとその多くがネゴシアン物となります。
一般的に、ピュリニーは石灰質が多い土壌で、シャサーニュは粘土質が多い土壌なので、前者は上品で華やか、後者はボリューム感がありパワフルなワインになると言われています。
田崎真也氏の著書によれば、熟成するとピュリニーはシェリー香が、シャサーニュはコーヒー香が出やすく、一般的にパワフルなワインがコーヒー香が出やすいとのことです。
DRCのモンラッシェは、たった2回しか飲んだ経験がないのですが、2回とも見事なまでにカフェオレの香りがしました。
目をつぶると、まるで湯気のたったカフェオレが目の前にあるかのよう、そして舌の上で転がすと、ちょっと古くてわかりづらいかもしれませんがライオネスコーヒーキャンディーをなめているかのような錯覚にとらわれました。
私の最後の晩餐にワインを1杯飲めるとしたら、迷うことなくDRCのモンラッシェをお願いします。
モンラッシェの西に隣接してピュリニー側にあるのが、モンラッシェに次ぐと言われるシュヴァリエ・モンラッシェです。
モンラッシェの畑と県道を挟んで東側に位置し、モンラッシェと同様に両村にまたがり、やはり半々ぐらいの面積に分かれているのがバタール・モンラッシェで、その北東の一角を占めるのがビアンヴニュー・バタール・モンラッシェ、南に隣接するのがクリオ・バタール・モンラッシェです。
この中では、他のワインと同様に、名前の短いバタールが最上です。
シュヴァリエ、バタール、ビアンヴニュー・バタールを所有するドメーヌ・ルフレーヴ、シュヴァリエ、バタールを所有するミシェル・ニーロンがワインラヴァーの間では人気です。
マダム・ルロワが個人で所有するドメーヌ・ドーヴネは、シュヴァリエ、バタール、クリオ・バタールを造っています。
また、DRCはバタールの畑を0.13ha所有していますが、自家消費用とされ市販されておらず、幻のワインとして有名です。
「ドメーヌのセラーの中で見た」という人がいたりしますが、「信じるか信じないかはあなた次第です」的な都市伝説の領域です。