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ワインのトリヴィアル・パスートVol.45【 垂涎のワイン・アメリカ編 】

【 垂涎のワイン・アメリカ編 】

アメリカの垂涎のワインと言ったらカリフォルニア州に集中します。
アメリカでは、ビジネスの成功者の最後の夢がカリフォルニアで自分のワインを作ることといわれています。
そして高品質なワインを作るために投資をし、手間暇をかけて小ロットで生産します。
この生産量が極少というところがボルドーの5大シャトーと一番異なる点です。
その少ないワインを、アメリカの金持ちが奪い合うので需要と供給の関係から信じられないくらいの高値で取引されているのが現状です。
そんなワインが雨後の筍のように次から次へと誕生してきます。
このような状況ですから、選別し列挙するのも難しく、今回は評価がすでに定まったワインを挙げてみたいと思います。
カリフォルニアワインと言ったらまずはボルドータイプでしょう。
その筆頭は、間違いなくスクリーミングイーグルです。今や、海外でも安くとも30万円くらいで取引されています。
その次は、ハーラン・エステートでしょう。
不動産事業で大成功を収めたビル・ハーラン氏が1984年に設立し,コンサルタントにミッシェル・ロランを起用した、カリフォルニアカルトワインの走りといってもいいでしょう。
その他、2019年にLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループが経営権を掌握したコルギン、弁護士で成功を収めたドナルド・ブライアント氏のブライアントファミリー、2013年からシャトー・ラトゥールのオーナーが所有することになりアロウホ・エステートから名前が変更されたアイズリー・ヴィンヤード、オーナーが趣味で始めたワイン造りからカルトワインになったグレースファミリー、シャトー・ペトリュスのオーナーのクリスチャン・ムエックスが所有するドミナス等々が代表です。
15年ほど前にニューヨークのモダン・アメリカン・キュイジーヌ・レストランのオレオールに行ったとき、カルトワインのひとつであるダラ・ヴァレのマヤの1998年をオーダーしたのですが、ソムリエに「一杯どうぞ」と言った時の喜びようは日本のソムリエではありえないような大変なものでした。
最も有名かつ手頃なのがロバート・モンタヴィとムートン・ロートシルトのジョイントベンチャーであるオーパス・ワンですが、オーパス・ワンも今や5万円ぐらいなので手頃と言っていいのかどうか・・・。
ワシントン州のワインでは、クィルシーダ・クリークとレオネッティ・セラーズがカルト気味ですが、カリフォルニアのものと比べると値段はかわいく感じてしまいます。
ボルドー品種以外でいうと、ピノ・ノワールとシャルドネでは、キスラーとマーカッシンが二大巨頭です。
キスラーは、ブルゴーニュ同様のワイン造りをいち早くカリフォルニアで確立し、ブルゴーニュのグラン・クリュにも対抗できると言われています。
マーカッシンは、コルギンやブライアントファミリーを手掛けたワインメーカーで、ワインの女神と言われたヘレン・ターリーが1990年に設立したワイナリーです。
1998年3月1日号のブルータスで紹介されたカレラのジャンセンは、ロマネ・コンティの苗で、リモートセンシングでピノ・ノワールに適した石灰岩の土壌を探して造られた(多少眉唾)と言われ、値段も4000円程度で買えたことから随分と話題になりました。
今では、多少カルトがかってきて2万円前後で取引されていますが、一般的なカリフォルニアカルトワインの値段と比較するとまだ手が届きそうです。
また、同じワインを2度と造らないという変態的な作り手にシン・クア・ノンがあります。
シラーやグルナッシュ、ルーサンヌ、マルサンヌ、ヴィオニエといった南仏のブドウ品種を主体としたワインを造っていますが、エチケットもひとつとして同じものがなくバラバラなため、パーカー・ポイントを頼りに選ぶしかなさそうです。
キワモノ好きの私が珍しく一度しか手を出していないワインです。