【 日本ワイン 】
日本には未だワイン法がありません。
ブドウジュースで輸入しワインを生産しても国産ワインと名乗れるため、近年業界では日本のブドウだけから造ったワインを「日本ワイン」と区別して呼ぶようになってきました。
色々な方から「日本のワインはどうですか」と言う質問を受けると、少し前までは「生産者は大変真面目に一生懸命造っていますが、同じ価格帯の輸入されたワインと比べてしまうとどうしても割高感が否めません」とお答えしていました。
日本は、ワインのブドウ栽培にあまり適した気候ではなく、その分手間がかかるのに人件費は高く、そのうえ土地代までも高いので、どうしてもコストパフォーマンスでは劣っていました。
たとえばチリなどは、北が砂漠、東がアンデス山脈、西が太平洋、南が南極に囲まれ、ブドウの樹の最大の天敵であるフィロキセラの侵入も未だ許しておらず、有機栽培が苦労せずにでき、収穫も時には子供に小銭程度を渡しすべて手摘みで行えるという環境です。
まあ、敵う訳がありません。
しかし、ここに来て日本ワインに急激な変化が訪れていると私は思うのです。
ここ10年の間、ワイン造りに多大なる情熱をもった人々により小規模ワイナリーが次々と設立されているのもその一例です。
白ワイン用の日本固有のブドウ品種の「甲州」は、固有品種と言うこともあり以前からそれなりに世界の評価を得ていましたが、「酸で構成されたフレッシュなものは良いが、樽を効かせるとどうしてもブドウが負けてしまうのでは」と言うのが試飲するたびに私が感じていたことでした。
しかし近年、樽と果実味のバランスがよく、酒質から言うとブルゴーニュの名だたる白ワインにも匹敵するような高品質なワインが登場し始めています。また赤ワイン用のブドウのカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、シラーなど、濃い色で重厚な飲み口を特徴とする品種が、日本では土壌の影響なのかピノ・ノワールと見間違うほどのクリアな色で味わいもいかにも和食と合いそうな繊細なワインとして誕生してきました。
フランスやイタリアを筆頭とする旧大陸のワインに対し、アメリカやオーストラリアがジャムっぽい濃厚なワインでニューワールドという地位を確立したように、日本らしい繊細で淡麗を特徴とした新たなる「ジャパニーズワイン」というジャンルを形成できるのでは、と最近思えるようになってきたのです。
「とうとうここまで来たか日本ワイン」というのがワインラヴァーである私の率直な感想です。
是非、今後の日本ワインに注目してください。