【 垂涎のシャンパーニュ 】
高級シャンパーニュといえばクリュッグ、モエ・エ・シャンドン社のドン・ペリニヨン、ルイ・ロデレール社のクリスタルを元祖御三家と呼んでいいのではないでしょうか。
金持ちの象徴は、イギリスではクリュッグ、アメリカではクリスタル、日本ではドン・ペリニヨンと言われています。
クリュッグは、クリュギストというクリュッグ以外は飲まないといわれる愛好家(クリュギストも2タイプあるといわれ厳格なクリュギストはアルコールはクリュッグ以外は飲まない人、普通のクリュギストはシャンパーニュはクリュッグ以外は飲まない人だそうです。)がいることでも有名で、モエ・エ・シャンドン社のフラッグシップであるドン・ペリニヨンよりノンビンのクリュッグの方が高価なこともその地位を確固たるものとしています。
シャンパーニュは通常、飲み頃になった時に出荷されるのですが、一部のシャンパーニュメゾンではヴィンテージシャンパーニュの中の選りすぐりをメゾンで寝かせ、第2のピークを迎えた時に出荷するということを行います。
クリュッグでは、この第2のピークを迎えたシャンパーニュをクリュッグ・コレクションとしてリリースしています。
クリュグ・コレクションは意図して誕生したわけではなく、クリュッグの3代目当主が、第2次世界大戦直後にイギリス貴族のディナーに招待され1928年のクリュッグを振舞われた時、イギリス人とは違い熟成の概念のなかった当主はあまりのおいしさに驚き、自社のセラーに眠っていた1928年のヴィンテージシャンパーニュをクリュッグ・コレクションとしてリリースしたことが始まりと言われています。
また、シャンパーニュで単一畑から生産されているものは今世紀に入るまでは3種しかなく、そのうちの2種がクリュッグからリリースされています。
1979年がファーストヴィンテージの、ル・メニル・シュール・オジェ村のクロ・デュ・メニルのブドウで造られるブラン・ド・ブランと、1995年ファーストヴィンテージのアンボネ村のクロ・ダンボネのブドウから造られるブラン・ド・ノワールです。
ちなみに、単一畑から造られるもう一つのシャンパーニュは、フィリポナ社のクロ・デ・ゴワセです。
日本では、一般的に高級シャンパーニュというとドン・ペリニヨンではないでしょうか。
バブルの時代には、ドンペリのロゼをピンドン(ピンクのドンペリ)と呼んでもてはやしたものでした。
その当時、別格の扱いだったのがレゼルヴ・ド・ラベイです 。
通常のドンペリが約8年熟成なのに対し、レゼルヴ・ド・ラベイは約20年熟成させたものでフランス国内と日本でしか販売されておらず、エチケットが金色をしていたことからドンペリ・ゴールドと呼ばれていましたが、2002年ヴィンテージを最後にリリースされていません。
また、16年ほど熟成させたエノテークと呼ばれたシャンパーニュがあり、こちらはエチケットが黒かったことからドンペリ・ブラックと呼ばれたり、ドンペリ・プラチナと呼ばれたりしていました。
近年、モエ・エ・シャンドン社はドンペリは3回のピークを迎えると強調するようになり、16年程度熟成したものをエノテークに代わりP2と呼び、約25年熟成させたものをP3としてリリースしています。
P3は1993年を最後にリリースされておらず、取引価格も飲み物ではない値段となっています。
ルイ・ロデレールのクリスタルは、1876年にルイ・ロデレールを寵愛したロシア皇帝アレクサンドル2世からの依頼により誕生しました。メゾンのホームページでは、「このキュヴェの高貴さを強調するため出来上がった素晴らしいシャンパーニュを平底のクリスタル・ガラスのボトルに詰めた」と書かれていますが、当時は権力者の毒殺が多かったことから透明なボトルが採用されたといわれています。
近年、カリスマ的シャンパーニュの生産者となったのがジャック・セロスです。
ノンビンのトップキュヴェが、シュブスタンスと呼ばれるシェリー酒を造る時の製法であるソレラシステムを採用したシャンパーニュです。(ソラレシステムを採用したシャンパーニュについては第2回頒布のユレ・フレールを参照してください。)
2003年に単一畑から造るリューディシリーズをリリースしました。アイ村のピノ・ノワールから造られるラ・コート・ファロン、メニル・シュール・オジェ村のシャルドネから造られるレ・キャレル、アンボネ村のピノ・ノワールから造られるル・ブー・デュ・クロ、マルイユ・シュール・アイ村のピノ・ノワールから造られるスー・ル・モン、クラマン村のシャルドネで造られるシュマン・ド・シャロン、アヴィーズ村のシャルドネから造られるシャントレンヌがあります。
その他で、マニア垂涎といえば、第53回のトリヴィアで扱ったサロン、ボランジェの接ぎ木してないピノ・ノワールで造られるヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ、ビルカール・サロモンのル・クロ・サン・ティレールなどでしょう。