【 メルロ比率 】
前回は、ボルドー地方左岸のカベルネ・ソーヴィニヨン比率をテーマにしましたが、今回は右岸のサン・テミリオン地区、ポムロール地区のメルロ比率についてです。
ヴィンテージによって比率は変わるので、下記は標準的な比率となります。
品種名略称
カベルネ・ソーヴィニヨンCS メルロMR カベルネ・フランCF マルベックMB
サン・テミリオン地区
オーゾンヌ MR50 CF50
サン・テミリオン地区の2トップのうちの一つです。
低調な時代もありましたが、1976年から復活を遂げます。
年間生産量が20000~25000本と少ないため、世界的には5大シャトーよりは高額で取引されていますが、日本では主要消費者である投資家が名前の響きから敬遠する傾向にあり、比較的リーズナブルな価格で流通しているので8大シャトー(5大シャトー+オーゾンヌ、シュヴァル・ブラン、ペトリュス)の中では狙い目のワインです。
シュヴァル・ブラン CF66 MR34
サン・テミリオン地区の2トップのうちの一つで、オーゾンヌが復活するまでは長年単独でトップを張ってました。
カベルネ・フランを3分の2も使う有名シャトーはなく、味わいも独特なものになっていて、唯一味わいの違いを感じることができそうなワインです。
ボルドーの8大シャトーの中で飲み頃の幅が最も広いワインとも言われています。
アンジェリュス MR50 CF47 CS3
1980年代にミシェル・ロランをコンサルタントにしてから劇的に評価が上がったシャトー。
特に1989年と1990年ヴィンテージの出来が良いとされ、以前パリのル・グラン・ヴェフェールで1990年ヴィンテージをオーダーした時、ソムリエの方から「このワイン、すごいよね。爆発的だよね。」と話しかけられた記憶があります。
パヴィ MR70 CF20 CS10
サン・テミリオンで最大の畑を持ち以前は年産18万本と左岸並みの生産量を誇った平凡なワインでしたが、1998年以降、劇的に品質が向上されたといわれるワイン。
2012年に実施されたサン・テミリオンの格付けで、それまでは別格扱いだったオーゾンヌ、シュヴァル・ブランの2トップに並ぶ格付けを、上記アンジュリュスと共に獲得しました。
(2022年に再度格付けが行われ、オーゾンヌ、シュヴァル・ブラン、アンジェリュスが格付を辞退し、下記のフィジャックが昇格したため、格付上は2トップになっています。)
フィジャック CS35 CF35 MR30
2022年のサン・テミリオンの格付けでトップに昇格しました。
フィジャックは、オーゾンヌが復活したり、アンジェリュスやパヴィが劇的に評価を上げる前は、常にシュヴァル・ブランに次ぐ、サン・テミリオンのナンバー2のワインと言われていました。
現在も、流通価格がお手頃なため、自腹で飲むには最適かもしれません。
ヴァランドロー MR75 CF20 MB5
1991年がファーストヴィンテージで、オフヴィンテージの1993年ヴィンテージで、ロバート・パーカーが高く評価したことから、いきなりスターダムにのし上がった新々シンデレラワイン。
話題になったころは、非常に高額で取引されていましたが、現在は落ち着いた価格になっています。
ポムロール地区
ペトリュス MR95 CF5
元祖シンデレラワインで、長年ボルドーで最も高額で取引されているワイン。
ほとんどの年がメルロ100パーセントで造られています。
オーナーであるクリスチャン・ムエックス氏が来日した時の試飲会に参加したことがありますが、参加者からライバルとされる次に記述してあるル・パンとの比較を質問された時、かなり不愉快そうに「全然作りが違う。あんな過熟は、決してさせない。」と答えていたのがとても印象的でした。
ル・パン MR92 CF8
新シンデレラワイン。
ヴィユー・シャトー・セルタンを所有するティアンポン家がペトリュスを目指し1979年から作り始めたワイン。
1982年ヴィンテージにロバート・パーカーが100点を付けたことから人気が高騰し、年によってはペトリュスを凌ぐ価格で取引されています。
ル・パンもペトリュス同様ほとんどの年がメルロ100パーセントです。
池袋西武がワインに力を入れていてショップにセラーがあった時代に、1992年ヴィンテージのル・パンが木箱の中に無造作に置いてあり、1本2万円の値札が付いていたのを思いだします。
当時は「オフビンなのに随分高いな」と思いましたが、ケース買いすべきでしたね。
ラフルール MR50 CF50
伝統のあるシャトーで、品質で時にはペトリュスを凌駕すると言われ、取引価格もペトリュスとル・パンを除けば最も高額なワイン。
カベルネ・フランの比率が非常な高いので、メルロ単独よりもより複雑な味わいが出ると言われています。
トロタノワ MR90 CF10
1953年よりペトリュスのオーナーが所有するワインで、ペトリュスとほぼ同様の工程でワインが造られています。
不調な時期がありましたが、2016年、2018年ヴィンテージのパーカー・ポイントで99点を獲得するなど、本来の実力を発揮してきているようです。
ラ・コンセイヤント MR80 CF20
1871年からずっと同じオーナーが所有している名門シャトー。
特徴的な香りがスミレといわれていて、キャップシールもスミレ色をしています。
随分前の話ですが、ある雑誌でブドウの収穫の様子が特集されていました。
そこで扱われていたのがラ・コンセイヤントでした。
摘み手の多くは、お金のない学生アルバイトで、食事と寝る場所が提供されるとのこと。
食事にはもちろんワインもついていて、普段はテーブルワインのようでしたが、収穫の最終日のディナーだけはラ・コンセイヤントが振舞われていました。
バイトの学生がインタビューを受け、「今日のワインはいつものよりおいしい気がする。」と答えていましたが、「そりゃ、美味いだろ。」と私は心の中で突っ込んでいました。
レヴァンジル MR75 CF25
1741年からの歴史を持つシャトーで、1990年からラフィット・ロートシルトのオーナーが経営しています。
北側でペトリュスと接し、南側でシュヴァル・ブランと接している好立地にあり、もともと実力のあるシャトーでしたが、ラフィット・ロートシルト家がオーナーになり、ますます品質が向上していると言われています。