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ワインのトリヴィアル・パスートVol.66【 レストランのワインリスト 】

【 レストランのワインリスト 】

再訪したいと思うレストランの条件は、人によって様々だと思います。
料理が美味しい、サービスが素晴らしい、内装が豪華、全体的なコストパフォーマンスに優れている、等々。
どれか一つでも唯一無二であれば、それだけで再訪理由になるでしょうが、そんな店はあっても一握りでしょう。
私の場合は、もちろん料理やサービスが突出していたり、コスパが抜群であれば再訪したいと思うですが、ワインリストも需要なポイントとなってきます。
以下、ワインリストを含め私の目線でお気に入りの店をいくつかご紹介したいと思います。

アピシウス 
ベンディングマシーンの運営会社であるアペックスのオーナーが日本一のレストランを目指して1983年にオープンしたグランメゾン。
北海道に専用の牧場を持ったり、トリュフを毎年、現地まで買い付けに行ったり、店にはシャガール、ユトリロ、ゴヤ、ビュッフェなどの絵が飾られ、サービス人も素晴らしく、フレンチレストランだけでなく、イタリアン、日本料理等々、すべてのジャンルの飲食店の中で一番と専門家やグルメの方々中で評価されていた時期もありました。
ワインはというと、ボルドーワインはプリムールで購入し、熱海にある専用セラーで飲み頃まで寝かしていたため、リストは飲み頃ワインのオンパレードでしたし、ブルゴーニュを含め、他の産地のワインも価格の高いものからリーズナブルなものまでマニア垂涎のワインが目白押しで、ワインリストかくあるべしといったようなものでした。
値段設定もリーズナブルで、市場で高騰してしまったワインを安く提供していたりして、ワインラヴァーは宝探しのような感覚でワインリストを熱心に見つめたものでした。
オーナーが代替わりをして、色々と効率化は図られましたが、まだまだ片鱗はありました。
最近、オーナーが別会社に変わったとのことですので、今後どうなっていくのでしょうか。

ツキ・シュール・ラ・メール
バブルの時代、築地の倉庫街に六本木のオー・シザーブルのシェフであった五十嵐氏(現在は、銀座ル・マノワアール・ダスティンのオーナーシェフ)を招聘してオープンしたクラブ・ニュクスという伝説のレストランがありました。
そのオーナーが現在運営しているのが、竹芝にあるツキ・シュール・ラ・メールです。
結婚式場としても有名なため、真のグルメからは少し敬遠されているかも知れません。
レインボーブリッジが拡がる光景は素晴らしいですし、フレンチを食べた後にお好みで寿司を摘まめるのも出色です。
現在はメニューに記載されていませんが、事前オーダーすれば提供してもらえるブイヤベースはマルセイユで食べられるものよりも美味では(ブイヤベース憲章には合致していませんが)、と個人的には思います。
シャンパーニュリストが充実していてかつかなり良心的な値付けです。
夕日の沈む東京湾の船の往来を見ながら、ブイヤベースとシャンパーニュ。
至福のひと時を味わえます。

シンシア
渋谷で予約の取れないレストランとして有名だったバカールのシェフの石井氏のレストラン。
こちらも予約は取りづらいですが取れないこともなく、オープンキッチンで多少カジュアルではありますがサービスも非常に感じのいいもので、料理ももちろん美味しくバランスのいいレストランです。
ワインの値付けもリーズナブルで、カルト日本ワインも散見されます。

ル・ブルギニオン
六本木の旧テレ朝通り沿いにある今や重鎮の菊地美升シェフの店。
20席のこじんまりとしたレストランで、料理はクラシックの範疇ですが美味で、心地よいサービスを受けることができます。
以前はブルゴーニュワインで有名でしたが、日本ワインも含めワインラヴァーには楽しめるワインリストです。

ファロ
資生堂が親会社のイタリアンです。
イタリアの2店舗でミシュラン1星を獲得した熊田耕太郎氏が料理長、イタリアのミシュラン3星レストラン等でペイストリーシェフだった加藤峰子氏がパティシエを務めることで話題を呼びました。
今年、熊田氏は退任しましたが、加藤氏は2024年3月に開催されたAsia’s 50 Best Restaurantで、アジアのベスト・ペイストリーシェフ賞を受賞して健在です。
スペシャリテの花のタルトは一度は食べたい逸品です。
店の方針としてワインの価格を同クラスのレストランと比較して抑えようとしているため、当然のことながら魅力的なワインリストです。
ソムリエの方との雑談で日本のカルトワインのドメーヌ・タカヒコのブラン・ド・ノワールを一度飲んでみたいと話したら、驚いたことになんと仕入れてくれました。
ロオジェも有する資生堂、流石です。