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ワインのトリヴィアル・パスートVol.67【 パリスの審判 】

【 パリスの審判 】

パリスの審判とは、1976年5月24日にパリで行われたワインの試飲会です。
パリのワインスクールの創設者であるスティーヴン・スパリュア氏が、アメリカ建国200周年の記念、そして建国時のフランスの功績を称えると共に、ワインスクールの宣伝も兼ねて、当時無名だったカリフォルニアワインを多くのフランス人に知ってもらうために開いたイベントと言われています。
審査員は全員フランス人で、ロマネ・コンティのオーナーであるオベール・ド・ヴィレーヌ氏、ミシュラン3星のタイユバンのオーナーのジャン・クロード・ブリナ氏、ミシュラン3星のル・グラン・ヴェフールのオーナーシェフのレイモン・オリヴィエ氏、同じくミシュラン3星のトゥール・ダルジャンのシェフソムリエ等の9名でした。
ワインは、白ワインがシャルドネでフランスから4本、カリフォルニアから6本、赤ワインがカベルネ・ソーヴィニヨン系で、やはりフランスから4本、カリフォルニアから6本でした。

白ワイン
フランス
バタール・モンラッシェ ラモネ・プルドン 1973年
ピュリニー・モンラッシェ ドメーヌ・ルフレーヴ 1972年
ムルソー・シャルム ルーロ 1973年
ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ ジョセフ・ドルーアン 1973年
カリフォルニア
シャローン・ヴィンヤード 1974年
シャトー・モンテレーナ 1973年
スプリング・マウンテン 1973年
フリーマーク・アベイ 1972年
ヴィーダー・クレスト 1972年
デイヴィッド・ブルース 1973年

赤ワイン
フランス
シャトーオー・ブリオン 1970年
シャトームートン・ロートシルト 1970年
シャトーモンローズ 1970年
シャトーレオヴィル・ラス・カーズ 1971年
カリフォルニア
スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年
リッジ・モンテ・ベロ 1971年
クロ・デュ・ヴァル 1972年
マヤカマス 1971年
ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年
フリーマーク・アビー 1969年

テースティング前は、フランス勢が圧勝し、カリフォルニアの何かが1本くらい食い込んでくるか、程度の感じだったと思います。

そして結果は、

1位 シャトー・モンテレーナ 1973年
2位 ムルソー・シャルム 1973年
3位 シャローン・ヴィンヤード 1974年
4位 スプリング・マウンテン 1973年
5位 ボーヌ・クロ・デ・ムーシュ 1973年
6位 フリーマーク・アビー 1972年
7位 バタール・モンラッシェ 1973年
8位 ピュリニー・モンラッシェ 1972年
9位 ヴィーダー・クレスト 1972年
10位 デイヴィッド・ブルース 1973年


1位 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年
2位 ムートン・ロートシルト 1970年
3位 オー・ブリオン 1970年
4位 モンローズ 1970年
5位 リッジ・モンテ・ベロ 1971年
6位 レオヴィル・ラス・カーズ 1971年
7位 マヤカマス 1971年
8位 クロ・デュ・ヴァル 1972年
9位 ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年
10位 フリーマーク・アビー 1969年

現代の感覚で見ると、白は今見ても惨憺たるものですが、赤はスタッグス・リープが頑張った的な感じだと思いますが、当時は安ワインとしか認識のなったカリフォルニアワインが、フランスの銘醸ワインに勝ったことが大スキャンダルとなりました。
パリスの審判とは、元々はギリシャ神話で、内容は今回の経緯とは何の類似性もないのですが、試飲会を取材した米国タイム誌の記者が、パリスとパリを引賭けてタイトルにしたことで、ワイン業界におけるパリスの審判として有名な話となりました。

結果に関して、ボルドーワインは熟成が真骨頂なので、まだ若かったという意見が多く出ていたこともあり、10年後の1986年にリターンマッチが2度行われます。
一つはアメリカのワイン雑誌ワインスペクターが主催したアメリカ人6人が審査員のもの、
もう一つは前回の主催者であるスティーヴン・スパリュア氏が企画したもので、前回のフランスの審査員は誰も引き受けなかったため、アメリカ人8人での評価となりました。
前者の結果が、
1位 ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年
2位 マヤカマス 1971年
3位 リッジ・モンテ・ベロ 1971年
4位 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年
5位 クロ・デュ・ヴァル 1972年
6位 モンローズ 1970年
7位 ムートン・ロートシルト 1970年
8位 レオヴィル・ラス・カーズ 1971年
9位 フリーマーク・アビー 1969年
10位 オー・ブリオン 1970年
後者の結果が、
1位 クロ・デュ・ヴァル 1972年
2位 リッジ・モンテ・ベロ 1971年
3位 モンローズ 1970年
4位 レオヴィル・ラス・カーズ 1971年
5位 ムートン・ロートシルト 1970年
6位 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年
7位 ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年
8位 マヤカマス 1971年
9位 オー・ブリオン 1970年
(1976年に最下位だったフリーマーク・アビーは不参加)

審査員が全員アメリカ人だったせいか、ますますカリフォルニアの圧勝でした。

そして、パリスの審判がワイン業界において、大スキャンダルだったため、その後も2回、同じワインを集めた試飲会が開催されました。
1回目は、30年後の2006年の1976年の時の同月同日の5月24日にロンドンとナパをつないでの開催で、審査員はイギリスの著名ワイン評論家のマイケル・ブロードベント、ヒュー・ジョンソン、ジャシス・ロビンソンや、1976年の審査をした二人のフランス人を加えた計18人です。
結果は
1位 リッジ・モンテ・ベロ 1971年
2位 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年
3位 ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年
4位 マヤカマス 1971年
5位 クロ・デュ・ヴァル 1972年
6位 ムートン・ロートシルト 1970年
7位 モンローズ 1970年
8位 オー・ブリオン 1970年
9位 レオヴィル・ラス・カーズ 1971年
10位 フリーマーク・アビー 1969年

最期は、2017年に日本で開催され、
審査員は、第6回全日本ソムリエコンクールで優勝した谷宣英氏を含めた日本人5人と、ハーラン・エステートのディレクター等計9人でした。
結果は、
1位 フリーマーク・アビー 1969年
2位 マヤカマス 1971年
3位 ムートン・ロートシルト 1970年
4位 リッジ・モンテ・ベロ 1971年
5位 モンローズ 1970年
6位 オー・ブリオン 1970年
7位 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年
8位 クロ・デュ・ヴァル 1972年
9位 ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年
10位 レオヴィル・ラス・カーズ 1971年

評価は、回によってまちまちで何の傾向も見て取れない気がします。
ちなみに単純に順位を足して、数が少ないほうをから並べると

1位 リッジ・モンテ・ベロ 1971年(15)    
2位 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ 1973年(20)
3位 ムートン・ロートシルト 1970年(23)
3位 マヤカマス 1971年(23)
5位 モンローズ 1970年(25)
6位 クロ・デュ・ヴァル 1972年(27)
7位 ハイツ・マーサズ・ヴィンヤード 1970年(29)
8位 オー・ブリオン 1970年(36)
9位 レオヴィル・ラス・カーズ 1971年(37)
10位 フリーマーク・アビー 1969年(40)
※フリーマーク・アビーは不参加を10位にしました。

強いて言うならリッジ・モンテ・ベロが常に上位だったことぐらいでしょうか。
また、フィネスを重要視するイギリスの著名ワイン評論家が揃った2006年の試飲会で、上位5位までがカリフォルニアワインだったことが、ちょっと意外でしょうか。
こう言うと元も子もありませんが、ある程度の品質のワインの試飲比較であれば、好みに左右されて、絶対的なものはないのでは、と思ってしまいます。