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ワインのトリヴィアル・パスートVol.33【 ブドウの品種 No.4 】

【 ブドウの品種 No.4 】

最終回は白ワイン用のブドウ品種です。

シャルドネ 
白ワイン用のブドウをひとつ上げろと言われれば、シャルドネと言って異論のある人はいないでしょう。
世界の最も高貴な白ワインはシャルドネから造られています。
スペインで主にブランデー用のブドウとして栽培されているアイレンを除けば、白ブドウの中で一番栽培面積の広いのがシャルドネです。
シャルドネはブドウ自体に特徴的な味や香りが無く、栽培されている地域や生産者の造り方で味わいが様々に異なってきますので、シャルドネという品種は好きとか嫌いとかいう対象にはなりません。
世界中で栽培されていますが、代表的な産地は断トツでフランスのブルゴーニュ地方です。そしてシャンパーニュを造るフランスのシャンパーニュ地方、アメリカのカリフォルニア州等が主な産地と言ってよいでしょう。
ブルゴーニュ地方では、白ワインの王様のモンラッシェを始めムルソーやコルトン・シャルルマーニュ、世界的に名が知れ渡っているシャブリ等が生産されています。
アメリカにおいて、白ブドウの中で圧倒的な栽培量を誇るのがシャルドネです。
かつては、樽の効いたバニラ香のするトロピカルな味わいの厚化粧なワインが主流でしたが、近年はブルゴーニュを意識した、品質も高く高額なワインが増えてきています。
キスラーやマーカッシン等が、マニア垂涎の逸品です。

ソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブランは、シャルドネに次ぐ国際品種で、ボルドーが原産と言われてきましたが、最近はロワールが起源ではないかと言われています。
ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・フランを掛け合わせたのが、あのカベルネ・ソーヴィニヨンです。
作付面積で言えばフランスが1番で、ニュージーランドが2番です。
ソーヴィニヨン・ブランの典型的な香りはピピ・ド・シャ(猫のおしっこ)と言われ、ブラインドで当てやすい品種の一つです。
また、ソーヴィニヨン・ブランは気候や環境の影響を受けやすく、ブドウの成熟度合いによって香りが変わると言われています。
成熟度合いが少ないとレモンやミント、成熟度が増すにつれリンゴ、洋ナシ、桃、アンズ、パイナップル、パッションフルーツやマンゴーへと変わっていきます。(参考文献 田崎真也氏のワイン味わいのコツ)
フランスでは、ボルドーとロワール川上流が主な産地です。
ボルドーでは、主にセミヨンとブレンドされ、辛口ワインも生産されますがシャトー・ディケムを筆頭とした甘口ワインで有名です。
ロワール川流域では、プイィ・フュメやサンセールが有名で、ニューワールド等の安価なワインが流通する以前は、パリのビストロの主流をなすワインでした。
ニュージーランドでは南島の北端に位置するマールボロ地区で全生産量の90パーセントを生産します。
畑が海のすぐそばなので、ミネラルの多い塩気を感じるワインに仕上がっていて、魚介類、特に生ガキとの相性は抜群です。

シュナン・ブラン / ムロン・ド・ブルゴーニュ(ミュスカデ)
この2品種はソーヴィニヨン・ブラン同様ロワール川流域を代表する白ワイン用ブドウ品種です。
ロワール川はフランスの中央を南から北へ流れ、オルレアンで直角に向きを変え東から西へと流れナントで大西洋に注ぎます。
全長1000キロメートルのうち、河口から600キロメートルがワインの生産地です。
上流では前述のソーヴィニヨン・ブランから造られるサンセールやプイィ・フュメが、中流ではシュナン・ブランから造られるサヴニエールやヴーヴレ、下流ではムロン・ド・ブルゴーニュ(ミュスカデ)から造られるミュスカデが白ワインの代表です。

シュナン・ブランは、世界で最も多用されているブドウ品種と言われ、甘口から発泡性ワイン、テーブルワインから高貴なワインまで様々なワインが造られています。
高貴な代表は、ニコラ・ジョリーのサヴニエールやユエのヴーヴレです。
また、南アフリカで一番多く栽培されているブドウで、南アフリカの白ワインと言えば、真っ先に思い浮かぶのがシュナン・ブランです。

ムロン・ド・ブルゴーニュという品種を目にするのは、ミュスカデくらいです。
品種の特徴がなくすっきりしたワインができるため、シュール・リー製法というワインの澱を取り除かずに旨味を抽出するという製造方法が多用されています。

リースリング / ゲヴルツトラミネール / ピノ・グリ
この3品種はアルザスを代表する白ワイン用ブドウです。
リースリングは、原産のドイツで今も最も栽培されているブドウですが、近年の日本においてドイツワインの人気がないためアルザスワインとして飲むことが多いと思います。
香りの特徴としてオイリーな重油化がありますが、口に含むものに対しあまりイメージの良くない言葉なので、田崎真也氏はりかちゃん人形の香りと表現していました。
相性の良い料理に天ぷらが挙げられ、これは間違いなく鉄板な組み合わせだと思います。

ゲヴルツトラミネールは、アルザス地方でリースリングに次いで栽培されているブドウで
アルザス地方特産のブドウですが、イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州のトラミンという町のトラミナーというブドウが起源と言われています。
マスター・オブ・ワイン(世界で400人弱しか取得していないワイン業界で最も権威ある資格)のジャシス・ロビンソン女史が「多くのワイン愛好家にとって、香りだけで識別できる唯一のブドウ品種」と言うように、大変特徴のある華やかな香りを持っています。

ピノ・グリは、ピノ・ノワールから派生した最もメジャーなブドウで、アルザスにおいて、リースリング、ゲヴルツトラミネールと共に、高貴なブドウ品種の御三家に数えられます。
イタリアではピノ・グリージョ、ドイツではグラウブルグンダーと呼ばれ、アルザス地方よりもはるかに多く栽培されています。
私の経験では外すことの少ない、お気に入りの品種です。

ヴィオニエ
今でこそ書店に行けばワインに関する本は溢れかえっていますが、私がワインに興味を持ち始めた80年代には、どんなに大きい書店に行っても3,4冊の本が置いてあるだけでした。その中に、辻静雄さんの「ワインの本」というのがあって、そこにヴィオニエから造るコート・デュ・ローヌ地方のシャトー・グリエとコンドリューというワインが登場します。
「酸化しやすく熟成に適さず長距離輸送にも耐えられない通のワインで、特にシャトー・グリエはたった一人の生産者が少量生産しているめったにお目にかかることのないワイン」、と紹介されていて、当時なんとかして飲みたいと思ったものでした。
ヴィオニエは、ゲヴルツトラミネールほど強い香りではありませんがライチや桃などの華やかな良い香りのするブドウ品種です。
また、同地域で生産されるシラーから造られる赤ワインのコート・ロティに少量のブレンドが許されています。1990年代にはラングドック地方でも栽培されるようになり、今や世界各地で栽培されています。

ルーサンヌ / マルサンヌ
この2品種は、ヴィオニエをと共にコート・デュ・ローヌ地方を代表する白ワイン用ブドウです。
ルーサンヌ、マルサンヌはコンドリューやシャトー・グリエの南に位置するエルミタージュ、クローズ・エルミタージュ、サン・ジョゼフ等の白ワインに使用されます。
ルーサンヌは華やかな香りとワインを熟成可能にする酸が特徴とされているのに対し、マルサンヌは収量が高いことが特徴の平凡なブドウ品種でルーサンヌのワインにボディーを与える役割を果たすと言われていました。
しかし、近年は醸造技術の進歩によりM.シャプティエ社のエルミタージュ等のマルサンヌ単独で造られる高品質のワインが誕生しています。

トレッビアーノ / ガルガネーガ / コルテーゼ
トレッビアーノはイタリアの白ブドウの中で一番栽培されている品種です。
フランスではユニ・ブランと呼ばれ、フランスでもシャルドネを抑え一番栽培されている白ブドウで主にブランデーの材料となっています。
トレッビアーノは、イタリアにおいて主にテーブルワインの生産に使用されていますが、
中にはエドワルド・ヴァレンティーニのトレッビアーノ・ダブルッツオのようなマニア垂涎の逸品もあります。

ガルガネーガは、ヴェネト州のソアヴェに使用されるブドウです。
ソアヴェはどちらかと言うと大量生産される安ワインですが、高品質なソアヴェを造る生産者も存在します。
ソアヴェの革命児と呼ばれるアンセルミ、歴史を持ちソアヴェの3大生産者と言われるピエロパン、ジーニ、イナマ(イナマの代わりにアンセルミを入れることもあります)そして歴史は浅いのですが評価の高いソアヴェを生産するニューリーダー的存在のカルガーテ、タメリーニがその代表です。
2,000円くらいで購入できるワインですのでこれら生産者を覚えておかれるといいと思います。

コルテーゼは、イタリアを代表する白ワインの一つであるピエモンテ州のガヴィに使用されるブドウです。
ガヴィは、元々はジェノバを州都に持つ南接したリグーリア州の名産である魚介類に合わせて造られたワインですので、魚介類を食べるときの候補にされるといいと思います。

マカベオ / ヴェルデホ / アルバリーニョ
この3品種は、スペインの白ワインに使用される代表的なブドウです。
マカベオは、ブランデー用のアイレンを除けばスペインで最も栽培されている白ワイン用ブドウです。
フランスのラングドック・ルーション地方でも広く栽培されており、スペインのリオハではビウラと呼ばれています。
また、チャレッロ、パレリャーダと共にカバの主要ブドウとなっています。
ヴェルデホは11世紀に北アフリカからカスティーリャ・イ・レオン州のルエダに持ち込まれたと言われています。
ルエダにおいて国際品種であるソーヴィニヨン・ブランとの戦いも制し、こくやエキス分が特徴のスペインを代表する白ワインです。
アルバリーニョは、リアス式海岸と言う名称の由来となったリアス・バイシャスで栽培され、スペインで最も上質な白ワインのひとつになります。
ワインの特徴はフレッシュでフルーティー、そして魚介類との相性が大変良いことから「海のワイン」と呼ばれています。

トロンテス
トロンテスはスペインが原産ですが、今やトロンテスと言えばアルゼンチンの白ワインを想起させるまでになりました。
フローラルでスパイシーな独特の香りがあり、ブラインドでもわかりやすい品種です。

甲州
日本の在来品種で、日本で一番生産量の多いブドウです。
山梨県において日本で初めて本格的にワインが生産されたのもこの甲州からで、以前から甲州は世界でも知られていました。
甲州に樽を効かせてワインを造ることは難しいと言われていましたが、近年樽の効いた上質なワインも増えてきました。